【Research Report】日銀の国債買入れがJGBのタームプレミアムに与える影響の基礎的な実証分析
- 2015年9月28日
投資⼯学研究所 主任研究員
- 田中 良典
サマリー
日銀による巨額の国債買入れについて黒田総裁は、「タームプレミアムを押し下げ、イールドカーブ全体に押下げ圧力をかけていく」としている。タームプレミアムは、流動性プレミアムと金利リスクプレミアムで構成され、長期国債の巨額の買入れは、直接的にこれらのプレミアムを縮小させることを意図していると思われるが、国債買入れとタームプレミアムの関係を調べた例は少ない。そこで本研究では、JGBとOIS(Overnight Index Swap)のスポットレートカーブの差分をタームプレミアムカーブとし、流動性プレミアムの指標として国債市中残存率を、金利リスクプレミアムの指標として価格ヒストリカルボラティリティを用い、国債買入れがタームプレミアムカーブに与える影響の基礎的な実証分析を行った。その際、緩和期間の別(包括緩和、異次元緩和、追加緩和)とアナウンスメント効果として金融政策運営方針と買いオペのオファーも考慮した。
その結果、国債買入れが流動性プレミアムや、金利リスクプレミアムを縮小させていたこと、また、買いオペのオファーや強いコミットメントを示した金融政策運営方針がタームプレミアムを縮小させていたことが示唆された。そして、これらのファクターの感応度は緩和期間が進むにつれて鈍化していたことも示唆された。
今後さらに追加の緩和があるとすれば、より強いコミットメントが必要となるが、それは市中に残存する国債残高のより急激な減少と隣り合わせであり、結果として量的緩和の実施可能期間を短くすることになるだろう。