人材重視型CSRと企業価値(4)~従業員の多様性(Diversity)~

サマリー

本稿では、従業員の多様性(Diversity)のうち性別による多様性の観点から生産性との関係を実証的に分析する。ボードのDiversityを扱った3月号で論じたように、人材のDiversityは、様々な知見が企業活動に反映されることにより、商品開発力や問題解決能力の向上、より市場を理解したマーケティングなどにより企業価値を高める可能性がある反面、様々な意見の違いによる意志決定の遅れから企業価値を低める可能性がある。そのような議論は従業員レベルのDiversityにも援用できる。
2003年度のデータで見ると、従業員における女性比率が高い企業、管理職における女性比率が高い企業では、株主資本経常利益率が高くなる傾向が明確に見られた。この結果は、多様な人材が活用されることによる効果が意見の相違などのデメリットを総じて上回ることを示唆している。その一方、総資産付加価値率に関しては有意な差が見られなかった。また、企業規模別に分けた分析では、小型企業、大型企業ともに同様の傾向が見られた。女性活用がどのような企業で特に有効かについては追加的なリサーチが必要と思われるが、小型企業において女性の活用が比較的進んでいる一方、女性の活用度が高まるにつれて限界的な効果が小さくなると考えられることを踏まえると、この結果は女性活用が小型株で有効である可能性を否定するものではない。
生産年齢人口の減少が長期的に見込まれる我が国企業においては、女性労働力の活用は企業の人材マネジメントの観点から非常に重要な意味をもつ。今後、団塊世代の大量退職を控え、我が国企業では優秀な人材の確保が競争力を規定する重要な要因となりうる。そうした中、性別のDiversityを確保することは企業選別の有益な視点となりえよう。

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