年金訴訟と受給権

サマリー

1990年代後半以降の企業年金を取り巻く環境は非常に厳しく、2000~2002年度の3年間は、運用実績が連続してマイナスを記録し、企業年金は制度発足以来の未曾有の危機に見舞われた。こうした中で、企業年金二法が施行され、企業年金の選択肢が拡大した。企業は、企業及び従業員のニーズにあった年金制度を組み合わせながら給付設計を検討している状況にある。
企業が企業年金改革を進める中で、最近、年金受給者の給付額削減等をめぐる年金訴訟が見られる。判決の結果は事件によって異なるが、給付減額の可否判断にあたって、将来減額される旨の明文化された規定があるかどうかといった年金規程(就業規則)の整備状況のみならず、給付水準が社会一般と比べて高いか低いか、他の受給者がどのぐらい同意したか、会社側が給付減額について受給者に十分な説明をしたか等の、個々のケースの実情も勘案されている。
受給権保護の観点では、受給者減額を行わないことが最も望ましい一方、減額措置を放置し、制度が破綻した場合、支払保証制度がない制度では年金額がゼロになってしまう可能性もあるという最悪の事態も想定される。受給者減額は、企業・受給者の両者にとってセカンドベストな解であるとも考えられるが、どのような条件の下で減額が認められるかについては十分な検討が必要である。

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