国家の老後所得保障と個人の自助努力(1)英国年金白書
- 2006年10月31日
社会システム研究所
- 有森 美木
サマリー
英国では、2006年5月に公表された年金白書「退職に関する保障:新しい年金制度に向けて」において、公的年金の1階部分である基礎年金の支給開始年齢の引上げや、自動加入を特徴とした新たな貯蓄制度の創設等の政府年金改革案が示された。政府改革案の内容は、独立諮問機関である年金委員会から示された改革案の内容に沿うものとなっている。政府案は、持続可能な公的年金制度を構築するために公的年金改革を行いつつも、基礎年金の給付水準を引上げる等、公的年金によって一定の老後所得保障を提供するという方向性を打ち出している。また、税控除のある任意加入の私的年金であるステークホルダー年金が普及しなかったという教訓から、自助努力を推進する新たな方法として、自動加入によって老後所得を備える機会を提供することを提案している。