理事(前専務取締役)
ESG(環境・社会・ガバナンス)に対する社会的な関心が急速に高まる中、企業のステークホルダー(利害関係者)とESGの関係は、その範囲が広いこと、複雑なこと、曖昧なことなどによって、十分分析把握されていない。このような状況の下、本特別号では、各ステークホルダーについてサステナビリティ社会に向けた課題を整理するとともに、企業のステークホルダーとESGの関係について限られた範囲ではあるが、考え方の整理や実証分析を試みた。
具体的には、環境会計の開示と株主資本コストの関係や、企業の生産性と環境コストの因果関係の実証分析を行ったところ、環境情報は企業財務に影響を及ぼしていることが明らかになった。また、従業員への教育訓練の持つCSR的な意味の他、CSRの経営者行動、国連の「責任投資原則」の投資行動への意味についての考え方を整理した。
これらの結果は、ESGは企業価値評価の重要な要素であり、ガバナンスの観点からも、今後注目されることは間違いないと思われる。特に、経済、社会、環境が激変する中で、ESGは企業のサステナビリティを左右する要素と考えられるので、今後も情報収集と分析を深化させていきたいと考えている。