わが国の確定拠出年金の発展に向けた提案~運用商品を中心に~

サマリー

わが国の確定拠出(DC)年金制度は、2001年の制度導入後、着実に増加しているものの、主要な私的年金制度として定着しているとはいいがたい。昨年、制度導入から5年が経過したこともあり、厚生労働省から、企業年金の現状と課題に関する報告書が出され、その中でDCの発展に向けた課題の整理が行われている。本稿では、このようなDCの現状と国内の議論を踏まえた上で、米国の状況を参考にしながら、運用商品面を中心にDCを発展させるための方策を検討した。
米国ではDCが確定給付(DB)年金制度を加入員数、資産規模ともに凌駕している。DCの主要な制度である401(k)プランの運用商品はミューチュアル・ファンドで運用される比率が増加してきており、直近では50%を上回る状況になっている。一方、行動ファイナンスの観点から加入員の投資行動の分析が行われた結果、米国でも加入員は合理的な投資を行っていないことが判明した。米国でも投資教育が不十分で、投資アドバイスのニーズが高まっている。このような課題に対して、2006年に企業年金改革が行われ、受託者責任を守りながら、実効性のある制度に向けた改良が進められている。具体的には、自動加入、自動拠出増額、デフォルト投資プランなど行動ファイナンスの知見が活かされてきた。今後は、投資アドバイスの標準化が進み、多くの加入員は、投資アドバイスが組み込まれたマネージド・アカウントを選択すると推測されている。わが国のDCを発展させるためには、運用商品に関連して、(1)配偶者への投資教育の提供、(2)適格退職年金制度廃止の受け皿として拡充、(3)標準ファンドと給付ファンドに関する投資アドバイスが必要であることを提案したい。

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