オーストラリアの退職年金保障制度(スーパーアニュエーション)におけるESGの取り組み

サマリー

2006年4月に責任投資原則(PRI)が策定され、欧米を中心にPRIへの署名が広がっている。地域別に見ると、ヨーロッパ諸国の署名数が世界全体の40%以上を占めているが、国別に見ると意外にオーストラリアの署名が最も多く、特にスーパーアニュエーション・ファンドの署名が目立つ。そこで、本稿では、オーストラリアの年金制度の中のスーパーアニュエーション・ファンドについて、その運用形態、資産規模の推移などを概観した後、PRIへの署名が多い理由と、企業へのの取り組みの実情について調査し、わが国への示唆を検討する。
オーストラリアのスーパーアニュエーションは、保険料方式の退職年金保証制度で、雇用主は被用者の基本収入の9%を拠出し、被用者自らが運用先のスーパーアニュエーションを選択する。スーパーアニュエーションは、企業ファンド、産業ファンド、公的機関ファンド、リテール・ファンド、小規模ファンドに分類されることが多い。2008年3月時点の資産規模は順に、640億豪ドル、1,975億豪ドル、1,702億豪ドル、3,438億豪ドル、3,273億豪ドルとなっており、全体では11,029億豪ドルの規模になっている。10年間の増加率は産業ファンド、小規模ファンド、リテールファンドの順に高く、競争が激化している。
スーパーアニュエーションでPRIへの署名が多い理由としては、署名対象機関が多いこともあるが、スーパーアニュエーションのファンド間の競争が激しく、差別化の一つとして考えられていることが大きい。産業ファンドの一つであるARIAでは、投資している企業のESGリスクを管理するため、エンゲージメントを実践している。
わが国への示唆としては、スポンサーも含めた運用の色々なレベルにおいて、競争原理が働き、サービスが向上するような仕組みを検討することが挙げられよう。

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