【Short Review】一次エネルギー発電コストから推計した二酸化炭素の排出価格と排出総額

サマリー

 2015年12月、フランスのパリにおいて第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が開催され、2020年以降の温室効果ガス排出削減に向けた「パリ協定」が採択された。
 
パリ協定では、
  • 世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ+2℃より十分低く保ち、+1.5℃に抑える努力を追求することなどを目標として掲げた。
     
     近年の先進国の温室効果ガス排出量は省エネ技術の進展などから緩やかながらも減少傾向にあり、1990年時点との比較では2019年時点の温室効果ガス排出量は約20%減少している。しかし、中国やインドなど発展途上国の経済発展に伴い、世界全体では依然として温室効果ガス排出量は増加傾向にある。現在も世界の平均気温の上昇が一因ではないかと懸念される甚大な自然災害が世界各国で発生しており、2021年4月には、アメリカ政府により気候変動に関する首脳会議(気候変動リーダーズサミット)が開かれ、先進国を中心に非常に野心的な温室効果ガス排出量削減方針が表明された。そして、2021年11月にはイギリスのグラスゴーにおいてCOP26が開催され、「グラスゴー気候合意」が採択された。
     
    グラスゴー気候合意では、
  • 世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ+2℃を十分下回る水準に抑え、+1.5℃に抑えるための努力を継続するとし、パリ協定からさらに踏み込んだ表現を盛り込んだ。
     
     このような中、企業に対し気候変動等に関する開示の充実に向けた動きが国内外で行われている。例えば、国内でも上場企業等に対し、温室効果ガス排出量の測定や気温上昇に伴う経済的な損失額の試算などの開示検討が報じられている。そして、そのためには企業等が排出する温室効果ガスの経済的費用を把握する必要がある。
     そこで、本稿では、一次エネルギー源のうち温室効果ガスの一つである二酸化炭素を多く排出する石炭やLNGなど化石エネルギーによる発電、発電時に二酸化炭素を排出しない原子力エネルギーや再生可能エネルギーといった非化石エネルギーによる発電に着目し、それぞれの発電コストを用いて二酸化炭素の排出価格や国内で排出される二酸化炭素の排出総額を2020年時点、2030年時点の2時点で推計した。

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