【Research Report】実質無利子・無担保融資が信用金庫の決算に与えた影響の考察

サマリー

 コロナ対策として、政府系金融機関による実質無利子・無担保融資、日銀による企業金融支援特別オペに続き、民間金融機関による実質無利子・無担保融資が2020年5月に導入された。同融資は企業の規模にかかわらず上限が6,000万円と一定であることから、規模の小さい企業ほどその恩恵は大きく、都市銀行や地方銀行に比べて規模の小さい企業を融資対象とする信用金庫はその影響が大きい。本稿では、全信用金庫254行を対象に、民間金融機関による実質無利子・無担保融資が2021年3月期の貸出金残高、利回り、収益、与信費用に与えた影響を試算し、更に信用金庫を地域別・規模別に分けて分析した。その結果、実質無利子・無担保融資が貸出金残高(期末値)、貸出金利息、業務粗利益の前期比を対象行合計でそれぞれ13.9%、6.1%、3.9%押し上げている一方、貸出金利回りに与えた影響は、実質無利子・無担保融資以外の融資と実質無利子・無担保融資を含む貸出金全体の利回りの差(絶対値)が平均で0.02%と小さかった。地域別では、他地域に比べて感染状況が深刻で休業・時短要請が長期化した東京や近畿、九州北部で残高や収益への影響が大きくなった。また、与信費用への影響については、実質無利子・無担保融資のうちクレジットリスクがあるセーフティネット保証5号(融資額の20%が保証外)の貸出金残高(期末値)に占める割合が平均で2.7%となっており、仮にセーフティネット保証5号の残高全額が債務不履行となった場合、その損失額は対象行合計で2021年3月期の業務粗利益の27.5%に相当することがわかった。
 実質無利子・無担保融資は利子の補給が最初の3年間のみであり、加えて据置期間をそれより短く設定している企業が多いため、今後制度開始3年後の2023年5月にかけて、その返済により貸出金残高や収益において反動減が生じる可能性に留意が必要であろう。

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