【Research Report】コロナ対応の実質無利子・無担保融資が地方銀行の決算に与えた影響の考察

サマリー

 新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の資金繰りを支援するために、政府系金融機関による実質無利子・無担保の緊急貸付・保証枠、日銀による企業金融支援特別オペに続き、民間金融機関による実質無利子・無担保、保証料減免の信用保証付き融資(以下、実質無利子・無担保融資)が2020年5月に導入された。
 本稿では、データが取得可能な地方銀行62行、第二地方銀行37行を対象に、民間金融機関による実質無利子・無担保融資が2021年3月期の貸出金残高、利回り、収益、与信費用に与えた影響を試算した。その結果、実質無利子・無担保融資が貸出金残高(期末値)、貸出金利息、業務粗利益の前期比を対象行合計でそれぞれ4.14%、2.47%、1.70%押し上げている一方、貸出金利回りに与えた影響は、実質無利子・無担保融資以外の融資と実質無利子・無担保融資を含む貸出金全体の利回りの差(絶対値)が平均で0.01%と、総じて軽微であることがわかった。また、与信費用への影響については、実質無利子・無担保融資のうちクレジットリスクがあるセーフティネット保証5号(融資額の20%が保証外)の貸出金残高(期末値)に占める割合が平均で1.21%となっており、仮にセーフティネット保証5号の残高全額が債務不履行となった場合、その損失額は対象行合計で2021年3月期の業務粗利益の12.4%に相当することがわかった。
 実質無利子・無担保融資の利子補給は当初3年間であるため、制度開始3年後の2023年5月以降は当該融資が有利子に切り替わるのに伴ってその返済による貸出金残高や収益の反動減が生じる可能性に留意が必要であろう。

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