平成22年度退職給付会計50社の状況(速報)

サマリー

本稿は、東証一部上場の一般事業会社のうち、平成21年度決算において退職給付債務の額が大きかった50社の連結決算を取り上げ、平成22年度決算期における退職給付会計の概要を報告するものである。平成22年度の年金の資産運用は、円高の進展や欧州各国の財政不安の影響などにより、平成21年度の状況から一転して厳しいものとなった。従って、多くの企業において数理計算上の差異が発生したと予想される。さらに、退職給付会計基準に関する国際的な動向を踏まえると、積立不足の大きい日本基準適用企業は、未認識債務の即時認識によるバランスシートの悪化が懸念される。
以上のような観点から、50社の状況について概観した結果、(1)50社平均の積立比率は66.1%となっており、前年度に比べて0.3%低下したことが明らかとなった。この点について、年金数理計算上の差異の発生状況をみると、(2)50社平均の自己資本及び総資産に対する数理計算上の差異の発生額の比率は、それぞれ0.9%、0.4%に止まっている。この背景には、収益源泉の多様化や運用リスクの低減を図る企業の分散投資が奏功したことが考えられる。次に、日本基準適用企業について、未認識債務が自己資本比率に与える影響を試算したところ、(3)即時認識前の自己資本比率の平均は34.7%であったが、即時認識後は33.5%と1.2%低下することが示された。なかには、即時認識によって自己資本比率が8.4%低下する企業がみられるなど、バランスシートを大きく毀損するケースもみられた。未認識債務の企業財務への影響の大きさを踏まえると、年金の資産運用のリスク管理がより一層重要になると考えられる。

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