近年の雇用調整の決定要因における男女差の分析

サマリー

一般に、職務を遂行する上で男女の能力や役割に差がないのであれば、雇用調整における男女差は生じないと考えられる。しかしながら、これまでの研究によれば、しばしば雇用調整における男女差がみられることが明らかにされている。そこで本稿では、企業における女性活用が本格的に進展しつつある昨今の状況を踏まえて、リーマンショック後の2008年度と2009年度について、雇用調整の決定要因における男女差の分析を行うことにする。
分析の結果、早期退職や会社都合に伴う離職者は男性に多くみられる傾向があり、とりわけ、転籍に伴う離職者は男性が多い様子がみられた。一方、男性に比べて、女性は自己都合に伴う離職者比率が高いことが明らかとなった。
さらなる分析によれば、企業が経常赤字に陥ると、男性の場合は早期退職に伴う離職者比率が高まるのに対して、女性の場合は採用者比率が抑制される傾向が明らかとなっている。この採用者比率の抑制傾向は、管理職比率と平均勤続年数によって説明される点も女性特有の傾向であった。
これらの分析結果は、近年の雇用調整の離職者の状況において男女差がみられることを示すものである。しかしながら、雇用調整の決定要因における男女差の分析結果を踏まえると、少なくとも企業特有の技能の蓄積が低いことを理由として、女性が雇用調整の対象となったことを示唆するものではないと思われる。

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