ワーク・ライフ・バランス施策の導入が企業の生産性に与える影響に関する分析

サマリー

近年、従業員の多様な働き方をサポートするだけでなく、企業の生産性を高める施策としてワーク・ライフ・バランス(WLB)に注目が集まっている。この点に関して、導入した施策が本当に企業の生産性を高めているのか、或いは元来生産性の高い企業がWLB施策に取り組んでいるだけなのかを区別して議論することは重要である。即ち、このような効果を検証する場合、WLB施策の導入と企業の生産性の因果関係について適切に対処する必要がある。例えば、業績が良好な場合に企業がWLB施策を導入するのであれば、WLB施策は内生的に決定される変数である。回帰分析の推定の際、説明変数にこのような内生性がある場合には適切なパラメータを推定することはできない。本稿では、この内生性の問題について、阿部・黒澤(2009)のアプローチにならって分析を行うことにする。
分析の結果、「育児休業中、あるいは育児休業期間終了時の個別キャリア相談制度」、「事業所内に託児施設を設置している」場合には、生産性を高める傾向が明らかとなった。また、制度の運用状況を考慮した場合には、男女の均等処遇をすすめている状況の下でWLB施策が効果的に機能する可能性があることが示唆された。しかしながら、一部のWLB施策は企業の生産性を低下させるケースもみられたことから、その効果は一意に定まるものではないことに注意が必要である。本分析の結果は、限定的なサンプルの影響に注意が必要であるものの、WLB施策を導入すると同時に、導入した制度が機能的に運用されるような環境を整備することが重要であることを示唆している。

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