環境会計の開示と株主資本コスト

サマリー

地球環境の深刻化が問題となる中で、企業の環境問題へのかかわりに関心が高まっている。企業自身も、自社の取組状況を詳細に報告するケースが目立っている。國部・伊坪・水口(2007)は、このように環境と経済を両立させるような経営を環境経営として定義した上で、環境と経営を結びつけるような会計システムを導入することによって、企業活動の目的と整合するような環境経営の実現を志向することが重要であると述べている。近年、この会計システムとして注目されているのが環境会計である。関連研究によれば、企業のディスクロージャーは、株主資本コストの低下を通じて企業価値を高める可能性が示唆されているが、環境会計の開示も同様の傾向があると考えられる。本稿では、環境会計の開示と株主資本コスト及び環境コストの多寡と株主資本コストの関係について分析を行い、企業価値への影響について検討する。
分析の結果、環境会計の開示は株主資本コストを有意に低下させる傾向が示唆された。しかしながら、幾つかの条件の下では有意性は大きく低下しており、上述の結果は限定的であることが確認されている。その一方、環境会計を開示している企業について分析を行ったところ、環境コストが相対的に大きい企業は、株主資本コストが高いことが明らかとなった。以上の結果は、國部・伊坪・水口(2007)が重要性を指摘する環境経営を積極的にサポートするものではない。しかしながら、ある程度まではコストが増加しても環境負荷の低減に努力し、長期的な環境と経済の両立を目指すことが重要であるとする彼らの見解は、企業活動からみてある程度整合的に環境問題へ取組むための有効なアイデアの一つと思われる。

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