社会システム研究所
CSR調査室
東京都は改正した環境条例の概要を発表した(6月25日)。2010年度より都内の事業所に対し、温室効果ガス(CO2)排出総量の削減を義務化し、その補完的措置として独自に排出量取引システムを導入する。対象はCO2排出量の大きい約1300の大規模事業所。実効性の確保のために、守れなかった際には罰金が課されることになった。都は大規模事業所全体で2020年度までに15%から20%程度の排出量を削減をする方針を示している。ただし具体的な削減率などの詳細については有識者との検討会を経て、今年度末までに決める。
CO2の排出枠を設定し実際の排出量との過不足を取引(キャップアンドトレード)をする点はEUの排出量取引と同じである。異なるのは、EUでは与えられた排出枠をそのまま売買できるが、東京都では削減しなければならない量以上に削減できた場合に、その分だけを他の事業所に売ることができるという点である。都内にある約70万の中小規模事業所に対しては、任意で地球温暖化対策報告書の提出を求める。
しかし、東京都独自に温暖化対策を行うことの有効性について懐疑的な声もあがっている。国全体の統一基準がないからである。日本政府はすでに今秋より試験的に排出権取引を導入すると発表しているが、経済産業省や環境省の提案する排出権取引システムと必ずしも一致していない。産業界や国内経済団体との調整や有識者との検討会を経て今後、統一された基準ができることが望ましいと考えられる。