女性の登用と株式リターンに関する一考察

サマリー

本稿では、企業が女性の登用を積極的に進める際のコストに注目して、女性の登用と株式リターンの関係について分析を行う。女性の登用を進める場合には、OJTやOff-JTを通じた人材育成をはじめ、女性従業員がキャリアを継続できるような両立支援施策や、女性の新卒或いは中途採用の活動など、相応のコストが発生すると考えられる。従って、これらのコストが固定費として追加的に発生する場合には、他の条件を一定とすれば、営業レバレッジの増大を通じて企業のキャッシュフローリスクを高める可能性がある。一般に、男女のダイバーシティに代表されるワーク・ライフ・バランス施策と、企業パフォーマンスには正の相関が示唆されるといわれているが、その源泉がキャッシュフローリスクの代償である可能性について確認しておくことは重要であると思われる。
分析の結果、女性の登用が進んでいる企業では、トービンのq、株式資本配当率が高く、企業規模が大きい傾向が示された。但し、女性の登用が株式パフォーマンスに与える影響について分析を行ったところ、女性の登用が進んでいる企業のパフォーマンス及び市場リスクについて特徴的な傾向は見受けられなかった。この結果は、「女性の登用による追加的な固定費の発生が営業レバレッジの上昇を通じて市場リスクを高める」傾向を必ずしも示すものではない一方、女性の登用によるベネフィットがポートフォリオのリターンを高める源泉となるような傾向を示すものでもないと考えられる。

全文ダウンロード

サービス・事例紹介

この記事に関連する当社のサービスや事例のご紹介をご希望の方は、下記よりお問い合わせください。
担当研究所・研究員からご案内をいたします。

ご意見の投稿

この記事についてご意見をお聞かせください。
今後のサイト運営や、レポートの参考とさせていただきます。

  • 戻る
  • ページ先頭へ戻る