裁量的行動からみた割引率、期待運用収益率、数理計算上の差異の償却年数の決定要因~平成20年度退職給付会計の分析~

サマリー

本稿では、平成20年度の退職給付会計における裁量的行動に注目して、企業の選択した割引率、期待運用収益率、数理計算上の差異の償却年数と、積立不足や企業業績との関係について分析する。また、これらの指標に関して、当該年度に変更を行った企業に注目して、変更を行わなかった企業との企業特性の違いを検討する。先行研究によれば、これらの指標は、しばしば裁量的に設定されることが明らかとなっている。近年、退職給付債務が企業財務に与える影響の大きさに注目が集まっていることからも、この点を確認しておくことは重要である。
分析の結果、積立不足比率が大きく、前年度に発生した数理計算上の差異が大きいほど、割引率や期待運用収益率の水準が高く、償却年数が長い傾向がみられた。また、積立不足比率が大きい企業は、割引率や期待運用収益率を低下させる傾向がみられた。積立不足比率の大きい企業は、元来、割引率や期待運用収益率を高めに設定するケースが多いと推察されるが、平成20年度の退職給付会計においては、それを是正するような変更が一部の企業で生じたものと思われる。
他方、企業収益との関係についてみると、総資産経常利益率の低い企業が割引率を高める傾向が見受けられるが、他の説明変数の符号条件を踏まえると、裁量的行動を示すような明確な傾向はみられなかった。

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