平成21年度退職給付会計50社の状況(速報)

サマリー

本稿は、東証一部上場の一般事業会社(除く金融)のうち、平成20年度決算において退職給付債務の額が大きかった50社の連結決算を取り上げ、平成21年度決算期における退職給付会計の概要を報告するものである。わが国の会計基準においては、国際会計基準(IFRS)のコンバージェンスに向けて、積立不足の即時認識が検討されていることから、企業財務への影響が懸念されている。平成21年度の年金の資産運用は、国内外の株式市場の回復を背景に運用利回りが大きく改善しており、積立不足が改善することが予想されるものの、積立不足の水準は依然として大きく、企業財務への影響を確認しておくことは重要である。また、このような会計制度の変更は、資産運用リスクが企業経営上のリスクになり得ることを示唆するものである。既に米国会計基準では、年金の資産運用の内訳について、詳細な開示が求められているが、IFRSにおいても同様の開示が求められる可能性が高い。
以上の観点を中心に50社の状況について概観した結果、次のことが明らかとなっている。(1)50社平均の積立比率は、前年度に比べて6.6%上昇し66.4%となったこと、この要因として、(2)資産運用の改善により年金数理計算上のプラス差異(マイナスの利差損)が発生したことが考えられ、50社平均の自己資本及び総資産に対する比率は、それぞれ-2.4%、-0.7%となった。さらに、積立不足が資本に与える影響について確認したところ、自己資本に対する比率の平均は11.3%となることが明らかとなった。これらの結果は、年金の積立不足とともに、資産運用リスクが、企業財務に大きな影響を与える可能性があることを示すものである。

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