ETFの価格の乖離リスクについての考察~iNAVの開示による実証分析~

サマリー

ETF(上場投資信託)には、保有資産の純資産価値に基づいて算出されたNAV(基準価額、一口あたりの純資産総額)と、取引所で約定した市場価格の2つの価格が存在する。市場価格は取引所における取引によって決定されるが、NAVから乖離する場合は、裁定取引によって市場価格とNAVの乖離が縮小すると考えられる。しかし、先行研究によると、ETFの市場価格は効率的に決定されていない可能性があるとされ、この背景として欧米のETF市場に比べて、国内のETF市場ではPCF情報(ポートフォリオの構成銘柄情報)やiNAV(一口当たりの推定純資産額)が適切に開示されてない問題点が指摘されている。
2011年4月11日より、東京証券取引所ではリアルタイムでiNAVの算出・配信を開始した。本稿では、iNAVの開示がETFの市場価格形成に与える影響について検証を行った。
その結果、取引所における日中の取引量が多い銘柄については、iNAVの開示が、市場価格とNAVの乖離リスクを低減させていることを確認できた。一方、取引所における取引量が少ない銘柄でも、同様にiNAVの開示による乖離リスクの低減効果は確認されたが、取引量が多い銘柄と比較すると、低減効果の度合いが小さかった。このことから、乖離リスクの要因としては、取引量、即ち流動性による影響も大きいと考えられる。

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