企業の早期退職の実施と企業価値への影響

サマリー

わが国の企業において、早期退職の実施は、リストラクチャリングの有力な手段の一つである。企業が早期退職を実施することによって、短期的には人件費などのコスト削減が期待できる一方、長期的には優秀な人材を失い、競争力の低下を招くことも考えられる。
そこで本稿では、早期退職の実施に関連する報道は、当該企業の株価への影響を通して企業価値に短期間に反映されるという仮定の下に、早期退職の実施が企業価値に与える影響について検証する。また、事前的な分析を通じて、早期退職を実施する企業の特徴を明らかにする。続いて、株式リターンを用いた分析によって、早期退職の実施が企業価値に与える平均的な影響を明らかにする。さらにその結果を用いて、早期退職を実施する企業の財務および従業員の特性が企業価値に与える影響について分析を行う。
これらの分析の結果、早期退職を実施する企業は、利益率が低く、規模が大きいという傾向があることが明らかとなった。また、統計的な有意性は認められないものの、早期退職の実施は企業価値に対して平均的にはネガティブな影響を与える可能性も示された。しかしながら、上述した早期退職を実施することによるコスト・ベネフィットは各企業の状況によって異なる可能性もある。そこで、企業価値への影響と企業特性の関係について分析を行ったところ、利益の改善が急務であるような企業においては、従業員に対する早期退職の実施は、相対的に企業価値に対してポジティブな影響を与える可能性が示された。

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