理事長室研究レポート「コロナ禍と個人消費」を公表

当社理事長室では、研究顧問の吉川 洋 立正大学学長、理事長の山口 廣秀、室長代理の杉野 聖の3名の共著として、研究レポート「コロナ禍と個人消費」をまとめた。本レポートでは、新型コロナウイルスの感染拡大によって世界的な不況が発生した中、他の主要国に比べても弱い日本経済の構造的問題について指摘している。

サマリー

新型コロナウイルスの感染拡大による今回の不況は、主要国いずれにおいても、従来大きな変動を示してこなかった個人消費が急減したという意味で新しいタイプの不況と言える。日本においては、政府・日銀の財政・金融面での諸措置が企業の倒産と消費者の生活破綻をある程度抑えることに成功したものの、一人10万円の特別給付金は大部分が預貯金に回り、消費の回復という所期の成果は上げることができなかった。そうした消費者行動の背景には、社会保障の持続性可能性や先々の所得増加への懸念が消費者の将来不安を高め、たとえ足許所得が増加したとしても、将来への備えとして予備的貯蓄を優先してしまう消費者の根深い慎重さがある。コロナ禍の下で一段と拡大した財政赤字は、消費者の不安をさらに高めることにつながりかねない。それだけに、今後財政再建に向けて具体的にどのような対応策を講じていくのか改めて国民的な議論を深めていくことが喫緊の課題である。またコロナ禍の下で講じられた大規模な金融緩和は、日本を含め主要国における資産バブルをさらに拡大させている。資産バブルが破裂した場合には、世界金融危機時を上回る負の影響が、日本の金融システムにも及ぶ惧れがある。金融当局はこうした点にも留意しつつ、長い目でみた政策のプランを速やかに策定し広く明らかにしていくことが必要である。

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