吉川 洋 研究顧問レポート「物価と期待Ⅱ」を公表

吉川 洋 立正大学経済学部教授(当社研究顧問)が当社における研究活動の一環として執筆した本レポートは、昨年11月に公表した「物価と期待」の続編で、物価は、基本的に生産コストとさまざまな物価同士の時差を伴った相互作用によって決まり、期待の影響はほとんどないことを明らかにする。

サマリー

デフレについて政府と日本銀行の間に微妙な現状認識の違いが生まれつつある。日銀は、物価上昇率が2%に達しないとはいえ、もはやデフレではないと言っているが、政府はいまだにデフレを脱却していないという判断である。こうしたずれがあるが、政府、日銀いずれも消費者物価の2%上昇を目標として掲げている。マネーを増やせば物価は上がるという「リフレ派」の考えは、2013年4月から今日まで4年間の実績により否定された。そうした中、財政再建を一時的に棚上げし、インフレを生み出す「物価水準の財政理論」(FTPL、通称「シムズ理論」)が注目を集めている。しかしこの理論には、「異次元の金融緩和」で物価は上がるとする「リフレ・モデル」と同じ根本的な問題がある。財政再建を一時的にせよ放棄して生み出されるインフレが、2%で止まる保証はない。いずれにせよ、物価は、基本的に(1)生産コストと、(2)さまざまな物価同士の時差を伴った「相互作用」によって決まる。「期待」の影響はほとんどない。

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