分散投資効果からみた「局面」分析~リーマン・ショック後の状況~

サマリー

金融市場では「有事」局面において各資産価格の「振れ幅」が大きくなる(=リスクが上昇する)とともに、その「連動性」が通常みられないほど強くなる(=相関係数が上昇する)傾向があることが、従来から指摘されてきた。このように分散効果が崩れてしまう「有事」局面に対して、より耐性のあるポートフォリオを構築するための考え方として、Chow, Jacquier, Kritzman, and Lowry[1999]が提唱する「有事」局面と「平常時」局面の分類法を利用したアセット・アロケーションの構築手法の紹介を行った(拙著「分散効果からみた『有事』」局面と資産配分」、NFIリサーチ・レビュー2009年4月号)。
2008年10月のいわゆるリーマン・ショックから3年以上が経過した。その後も、2010年1月に表面化したギリシャの財政状況の悪化を発端とした欧州ソブリン危機や2011年3月の東日本大震災など、金融市場を揺さぶる出来事が続いている。そこで本稿では、上記のChow, Jacquier, Kritzman, and Lowry[1999]の提唱する手法を利用して、基本的な資産の2001年1月以降のデータにより、リターンの「外れ値」(=リターンの分布形状から判断して通常の傾向から大きく乖離していると考えられるデータ)の発生状況について分析を行った。その結果、2010年以降極端な「外れ値」と考えられるリターンは発生しておらず「平常時局面」が続いているものと考えられることがわかった。
但し、このことは基本的なアセットクラス間における分散効果が十分得られることを必ずしも意味しない。国内株式・外国債券・外国株式の間の相関係数(過去60カ月)は、2007年から上昇し2008年末にかけてその水準を大きく切り上げ、2009年以降は高止まりした水準での推移が続いている。また、これら3資産と円ドル・円ユーロレートとの相関係数も並行して同じ時期に水準を切り上げ、その後高止まりした水準で推移している。例えば、国内株式と円ドル・円ユーロレートとの相関係数は、直近ではそれぞれ約0.5と約0.6とかなり高くなっている。従って、先進国を中心とする国際分散投資による十分な分散投資効果が期待しづらい状況となっていることには、十分な注意が必要である。

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