【Research Report】企業によるESG情報開示の現状と課題~ESG情報開示支援サービスからの示唆~
- 2017年5月26日
社会システム研究所
- 杉浦 康之
サマリー
昨今、国内外の機関投資家は、ESG情報を活用した投資を行っており、企業側は、投資家が求めるESG情報を提供することを求められている。こうした背景から、日興リサーチセンターでは、企業向けに、ESG投資に関する情報提供サービス(ESGワークショップ)と、投資家が求めるESG情報を企業がどの程度開示しているかを分析するサービス(ESG開示分析)の2つを提供している。本稿では、2つのサービスを利用した企業のデータから、企業の特徴や、投資家が求めるESGに関するKPI(Key Performance Indicator:重要性指標)の特徴、開示状況について分析を行った。
まず、ESGワークショップやESG開示分析を利用した企業は、海外持ち株比率や時価総額規模の大きい企業であり、さらにESG開示分析に進んだ企業は、その中でも規模が大きいことが確認された。
次に、投資家が求めるESGに関するKPIについて、本サンプルの特徴を確認したところ、製造業は非製造業よりも数多くのKPIの開示が求められており、環境だけに限らず、従業員や顧客など、いわゆる「S(社会)」に関するKPIも多いことが分かった。
KPIの開示状況を確認すると、本サンプルでは、投資家が期待するようなKPIの開示については十分とはいえない。時価総額の大きい企業は投資家が期待するKPIを開示している一方、時価総額の小さい企業では、投資家の期待とは異なるKPIを開示している傾向が確認された。
ESGのテーマ別にみると、従業員、顧客、サプライチェーンなどの「S(社会)」に関する開示が弱く、特にサプライチェーンに関するKPIが不足している。この点は、日本企業のESG情報開示における課題であると考えられる。