平成24年度退職給付会計50社の状況

サマリー

本稿は、東証一部上場の一般事業会社のうち、平成23年度決算において退職給付債務の額が大きかった50社を取り上げ、平成24年度決算期における退職給付会計の概要を報告するものである。平成24年度の年金の資産運用は、株高・円安が加速した結果、好調なパフォーマンスを記録する一方、大胆な金融緩和に伴い国内金利は大きく低下した。一般に、金利低下はPBOの増加要因となるため、年金資産の増加と相殺される場合には年金の積立不足が改善しない可能性もある。
以上のような観点から、50社の状況について概観した結果、(1)50社の積立比率の平均は68.8%となっており、前年度に比べて3.3ポイント上昇したことが明らかとなった。次に、数理計算上の差異の発生状況をみると、(2)50社平均の自己資本に対する数理計算上の差異の発生額の比率は0.5%にとどまることが示される。さらに、日本会計基準適用企業について、未認識債務が自己資本比率に与える影響を試算したところ、(3)即時認識前の自己資本比率の平均は32.4%であるのに対して、即時認識後は31.1%と1.3ポイント低下することが確認された。従って、即時認識の影響は限定的であると予想されるものの、一部の企業においては大幅に自己資本比率が低下するケースがみられており、バランスシートの悪化が懸念される。今年度決算から、バランスシートにおける未認識債務(年金の積立不足のうち費用処理していない部分)の即時認識がスタートする。バランスシートの改善は企業にとって喫緊の課題であり、退職給付制度の改定や年金の資産運用の見直しに取り組む企業がみられるほか、自己資本の減少に対処するために資金調達を検討する企業もみられる。

全文ダウンロード

サービス・事例紹介

この記事に関連する当社のサービスや事例のご紹介をご希望の方は、下記よりお問い合わせください。
担当研究所・研究員からご案内をいたします。

ご意見の投稿

この記事についてご意見をお聞かせください。
今後のサイト運営や、レポートの参考とさせていただきます。

  • 戻る
  • ページ先頭へ戻る