日本のコーポレートガバナンスとスチュワードシップ活動に関する英国からの示唆

サマリー

本稿では、2015年6月に行った現地調査に基づいて、英国の運用機関、年金基金、その他の団体によるスチュワードシップ活動の現状と、彼らからみた日本のコーポレートガバナンスに関する見解をまとめた。
まず、ヒアリングした英国機関投資家の多くは、エンゲージメントや議決権行使といったスチュワードシップ活動を、委託運用機関が行うべきであると考えている。また、ヒアリングした大手の年金基金では、委託先運用機関の運用パフォーマンスだけでなく、スチュワードシップ活動についてもモニタリングを行っている。加えて、英国では、スチュワードシップ活動のモニタリングをサポートするフレームワーク(運用機関による説明会のセッティングや運用機関の自主的なアセスメント・フレームワーク)が整備されている。運用機関と年金基金はともに、スチュワードシップ活動に関する説明責任を果たすため、そのスチュワードシップ活動に関する情報をウェブサイトなどで公表している。具体的には、企業の議案ごとの議決権行使の結果や、エンゲージメントを実施した際のテーマ、対象企業とその相手の職位、成果などを四半期ごとに開示している。このように、機関投資家による積極的な情報開示と、アセット・オーナーである年金基金によるモニタリングが、英国におけるスチュワードシップ活動のカギとなっている。
一方、日本のコーポレートガバナンスについて英国の機関投資家は、取締役会が効果的に経営者のモニタリングを行える場になっているかという点に着目している。その条件として、独立社外取締役を増やすこと、クオリティの高い独立社外取締役を選任すること、それらのバランスをよくすること(取締役会の多様性)などを挙げている。日本の企業は、自社のコーポレートガバナンスが実質的に機能していることを株主に対して、説明することが重要となろう。
以上のことから、日本においてコーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードに基づく年金基金と運用機関、あるいは機関投資家と企業との関係を確立・強化するためには、それぞれの取り組みを理解するための情報開示の強化と年金基金から運用機関に対する、あるいは機関投資家から企業に対するモニタリングが重要になると推察される。

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