社会システム研究所
本レポートは、2015年11月に米国の機関投資家(運用機関、アセットオーナー)に対して行ったヒアリング調査のうち、運用機関のESGインテグレーションに関する調査結果をまとめたものである。このヒアリング調査は、2014年、2015年に実施した欧州の機関投資家に対する調査(寺山・杉浦, 2014; 寺山・杉浦, 2016)に続き、米国の機関投資家のESGインテグレーション及びシェアホルダー・エンゲージメントに関する調査として実施された。
ヒアリング調査の結果、以下の知見が明らかとなった。第一に、ジャッジメンタル運用機関のアプローチについてみると、メインストリーム運用機関においては、主として銘柄選択プロセスにおいてESGが組み入れられる一方、ESG特化型運用機関においては銘柄選定プロセスだけでなく、投資ユニバースや運用ルールにESGが反映される傾向がみられる。ただし、何れの運用機関においても、長期的なパフォーマンスを向上させるために、ESGを組み入れる点が共通する。第二に、クオンツ運用機関のESGインテグレーションは、あくまで株式パフォーマンスを説明するファクターの1つとして考慮される。従って、どのようなESGの要素が考慮されるかは、運用モデルによって異なる。以上の調査結果は、米国のESGインテグレーションは、伝統的な運用手法で用いられる投資ファクターと同様に組み入れられているという点で、違和感ないものといえよう。