企業による環境経営へのコミットと保有現金の価値

サマリー

日本に限らず世界の先進地域の企業は、気候変動や環境問題に配慮する経営、いわゆる環境経営へのコミットメントを求められている。このことの背景として、環境経営が、企業の事業リスク軽減やサステナビリティ(持続可能性)を高めることを通じて、株主価値にプラスに作用する可能性があることが挙げられる。一方、環境経営に使われる資金の多くは内部資金であることから、その使用には経営者の裁量が大きい。そのため、資金が株主価値にプラスになるようなプロジェクトに利用されない可能性もある。本稿では、環境経営にコミットする企業が保有する現金(以降、保有現金)の限界価値(現金の1円増加に対する現金評価額の増加)を推定することにより、株主価値との関係を検討する。
分析の結果、環境経営にコミットする企業の保有現金の限界価値は、0.299円と推計され、額面(1円)を下回った。すなわち、株主は、環境経営に内部資金を充当することを高く評価しておらず、むしろ現金配当などの株主還元などに充当することが望ましいと考えていることを示唆している。一方、環境リスクやコーポレート・ガバナンスの影響を分析したところ、環境リスクの高い産業(環境ハイ・センシティブ産業)において、環境にコミットする企業の保有現金の限界価値は、環境リスクの低い産業(環境ロー・センシティブ産業)において、環境にコミットする企業のそれよりも高く、またコーポレート・ガバナンスが機能している企業ほど、その価値がさらに高まることが分かった。

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