市中残存額ベースの日本国債インデックス~従来の発行額ベースの国債インデックスとの比較~

サマリー

債券インデックスは、債券市場全体の動向を反映するパフォーマンスの尺度の1つである。その中で国内債券インデックスは、ある一定の組み入れ条件を満たす国内債券で構成された、債券ポートフォリオを対象として計算される累積投資指数である。弊社で公表している日興債券パフォーマンスインデックスの総合インデックスの内訳をみてみると、現状約8割を日本国債が占めている。

ところで債券市場では、黒田日銀総裁就任後に量的・質的金融緩和が実施され、日本銀行は日本国債の市中発行額の約7割に相当する額を毎月買入れており、最大の買い手として大きな存在となっている。引き続きこの状態が継続していくことが考えられ、日本国債の発行額と、日本銀行の買い入れ分を除いた、市中に残存している日本国債の残高との間に、無視できないかい離が徐々に生じており、今後さらに拡大していくと考えられる。しかしながら、従来の債券インデックスは発行額に基づいて計算されており、異次元金融緩和という特殊な環境下において、日本国債のパフォーマンスを正しく反映していない懸念がある。そこで本稿では、日本国債に関して市中残存額に基づいたインデックスの総合投資収益率を計算し、従来の国債インデックスの総合投資収益率と比較・検証を試みた。

検証の結果、市中残存額ベースの総合投資収益率の方が、平均で0.0065%パフォーマンスが高かった。また、このパフォーマンスの差のほとんどは、総合元本収益率の差に起因していることが判明した。今後も金利低下が安定的に持続するならば、両者のパフォーマンスの差は、さらに拡大する可能性が高い。この点インデックス運用を行うパッシブ運用機関は留意が必要であろう。

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