異次元金融緩和環境下における長期国債の買入れ予測と投資に関する一考察

サマリー

異次元⾦融緩和により、⽇本銀⾏による⻑期国債の⼤量買⼊れが開始されてから残り1年程度の予定となったが、物価の動向次第ではさらに継続する可能性がある。本稿では、現状の終了予定から、さらに2年間程度、⾦利が低位で⼀定の下、現状の⾦融緩和が継続すると仮定し、発⾏額、買⼊れ額、買⼊消却額を個別銘柄ベースで予測し、その差分を取ることで市中に残存する国債の残⾼を予測した。また、残存年数とクーポンからみた、発⾏額ベースと市中残存額ベースの国債ポートフォリオの構成⽐を⽐較し、どのように構成⽐に違いが⽣じるかを、資産等の買⼊れ基⾦が創設された2010年10⽉末からの実績データと合わせて、時系列推移で⽰した。

その結果、発⾏額ベースと市中残存額ベースのどちらの国債ポートフォリオも、残存年数は⻑期化し、クーポンは低下し、利⾦収益率も低下していくと予測された。しかしながら、買⼊れオペに⼊る銘柄は、カレント銘柄を中⼼に、残存10年以下で低クーポンの銘柄が⼤部分を占めるため、市中残存額ベースの国債ポートフォリオは、発⾏額ベースの国債ポートフォリオに⽐べ、クーポンが⾼く年限の⻑い銘柄群で構成されることになる。そのため、利⾦収益率は、市中残存額ベースの⽅が低下するスピードが遅く、発⾏額ベースの利⾦収益率との差は拡⼤傾向にあった。

⼀⽅で、これまでの国債インデックスの複利利回りと修正デュレーションの関係を⾒ると、修正デュレーションは⻑期化し、複利利回りは低下していた。国債投資の効率性指標として、市中残存額ベースの国債インデックスの単位修正デュレーション当たりの複利利回りは、低下傾向にあり、2014年6⽉末現在で0.066(%/年)である。この値を超える銘柄が存在する年限ゾーンは、残存1年近辺と残存12年近辺から37年近辺のゾーンであった。異次元⾦融緩和下において、利回りの低下を抑えるには、1年近辺と12年近辺を組み合わせてデュレーション当たりの複利利回りを維持しながら、市中残存額ベースの投資を⾏うという⽅法等が考えられる。

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