都道府県別の預金残高に関する分析

サマリー

長期にわたる低金利下において、銀行の預金残高は一貫して増加を続けてきた。しかし、金利上昇等の経済環境の変化や人口減、高齢化の進展等の社会的な変化によって、預金残高にどのような影響があるかを検討することは、金融機関の経営上重要な課題になっている。そこで、本稿では、全国と都道府県別の預金残高の傾向を調べ、現状把握や将来の想定に資する分析を行う。
全国の預金残高については、1998年4月以降一貫して増加する傾向にあり、特に個人預金は、1998年4月と比較して2014年4月は、約58%増加している。預金の種類別では、1998年4月と比較して2014年4月は、要求払預金がほぼ2.7倍になっている反面、定期性預金は、約10%減少している。そのため、一般預金(個人と一般法人の預金)に占める要求払預金と定期性預金の割合は、1998年4月にそれぞれ約32%、66%であったが、2014年4月は約58%、40%と逆転している。
都道府県別の預金残高については、一人当たり個人預金は、東京都の残高が最も多く、1998年4月の404万円から2014年4月は700万円となり、約73%増加している。2014年4月の残高が多い都道府県は、東京都、大阪府に続いて、徳島県、奈良県、香川県となっている。預金合計に占める個人預金の割合は、埼玉県、千葉県、神奈川県、三重県、滋賀県、奈良県、和歌山県等が上位であり、東京都、愛知県、京都府、大阪府の周辺県が高い。預金の種類別では、一人当たり要求払預金も東京都の残高が最も多く、1998年4月の324万円から2014年4月は850万円となり、約163%増加している。2014年4月の残高が多い都道府県は、東京都、大阪府、愛知県、神奈川県に続いて、香川県、徳島県となっている。一般預金に占める要求払預金の割合は、東京都、神奈川県、大阪府、愛知県が高く、徳島県、愛媛県、高知県の四国や滋賀県、鳥取県が低い。
金利上昇による預金残高の変化を把握するために、一人当たり要求払預金の増減率を目的変数、金利の変化幅を説明変数にして金利感応度を推定したところ、金利の変化幅の係数がマイナス(金利が上昇すると一人当たり要求払預金が減少するという関係)になる結果が得られた。さらに、一般預金に占める要求払預金の割合を目的変数、金利の水準を説明変数にして金利感応度を推計したところ、金利の水準の係数がマイナス(金利が高いと一般預金に占める要求払預金の割合が低いという関係)になる結果が得られた。最後に、これら2つの結果を順番に適用すると、1%の金利上昇と1%の人口減を仮定した場合、要求払預金は4.2%減少するが、一般預金は3.4%の減少でとどまるという試算結果を得た。

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