米国にみる機関投資家の議決権行使の現状

サマリー

株主行動にはコストとベネフィットがありそのトレードオフとなる株主利益は、状況次第で変わってくる。株主行動を積極化させた方がよい場合として、エージェンシー問題が深刻な場合がある。特に株主提案が株式総会で通りやすい状況では、積極的にエージェンシー問題の深刻な項目に対し、株主行動をとることが株主の利益になると考えられる。
議決権行使の受託者責任が明らかであるDB制度に対し、DC制度では必ずしも明確ではなく、投資信託の運用会社は、年金ビジネスでの取引関係の深い企業に対して経営者寄りの議決権行使を行っていると指摘されることも多かったが、SECは2003年7月以降の投資信託の議決権行使について、議決権行使基準とプロセス、実際の行使結果等に関する情報開示規制を導入した。投資信託も今後一層株主よりの判断を示す機関投資家となっていく可能性が高く、それにより、株主行動は株主価値を生みやすくなっていくものと考えられる。
なお、エージェンシー問題の深刻な「entrenchment項目」については、一般のガバナンス項目よりも、株主の価値を損ねているとの米国における分析結果もあり、実際米国では、株主はこれらの項目に対する株主行動を積極化しているし、今後もその傾向を強めるだろう。
東京証券取引所による電子投票システムの提供など、議決権行使のためのプラットフォーム整備の動きも、株主行動への追い風になるだろう。外国人投資家、国内外機関投資家の議決権行使のしやすさの向上は、企業のコーポレートガバナンスに対する株主の監視を強め、支配権を巡る争いをも増加させることが予想される。企業は経営の効率化と株主価値の向上を目指す経営を行うことがより一層求められる。浮動株式を吸収し安定株主をつくる1つの方法にESOPがある。安定株主化対策といった観点からESOPを検討してみるのも一考である。

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