SRIファンドのパフォーマンス
- 2006年12月27日
社会システム研究所
- 中嶋 幹
サマリー
企業の社会的責任が問われるようになって以降、CSRに対する企業の行動(コミットメント)が投資尺度の一つとなるような投資手法が広まっている。一般に、このような投資手法は社会的責任投資(以下、SRI)と呼ばれ、国内株式型の投資信託においてもSRIを標榜するファンドが散見されている。近年の研究によれば、CSRは企業の利害関係者にかかわる外部不経済の是正から長期的な企業価値に繋がりうるという見方があるが、この議論を踏まえると、SRIは付加価値を獲得可能とする投資手法である可能性がある。その一方、SRIは利用可能な投資機会が限定されることから、パフォーマンスが劣後しやすい投資手法であるとの見方も根強い。そこで本稿では、我が国のSRIファンドのパフォーマンス評価を行い、この点について検討していくことにする。分析の結果、SRIファンド及び従来型のファンドのリスク調整後のリターンの有意性は確認できなかった。このことは、両者のパフォーマンスの格差は見受けられないことを示唆するものと考えられる。但し、分析期間を2つに区分したケースでは、統計的に有意でないものの、2000年度以降のSRIファンドのパフォーマンスは高い結果となっている。以上の分析結果は、SRIファンドのパフォーマンスは必ずしも劣ったものではないことを示唆すると考えられる。