パネル分析による配当関連指標と個人持株比率に関する一考察
- 2007年3月31日
社会システム研究所
- 中嶋 幹
サマリー
配当政策に対する関心の高まりを受けて、従来の安定的な配当から業績に連動した配当を実施することにより積極的に株主還元を行う企業が増えている。このような背景の一つに、企業のフリーキャッシュフローに対して株主がより厳しい目を向けるようになったことがあげられる。一方企業にとっても、配当水準を高めることにより個人投資家1の持株比率を高める狙いがあるようにみえる。個人投資家は配当を選好する傾向が指摘されており、安定株主の有力な担い手として期待されていると考えられる。本稿では、後者の観点から、配当関連指標と持株比率の関係について分析を行うことにより、株主還元を重視した配当政策が個人投資家の持株比率を高めるかどうか検討する。また、個人投資家と比較するために外国人投資家2についても分析の対象とする。
分析の結果、個人投資家の持株比率を説明する要因の一つとして、配当利回りや株主資本配当率が有意であることが示唆された。その一方、配当性向が有意でなかったことから、配当を利回りの基準として捉えているように見受けられる。他方、外国人投資家についてみると、配当性向の高い銘柄を選好する傾向がみられた。但し、ROEやPBRも有意であったことを踏まえると、経営が効率的であり割安な銘柄を選好する傾向があると考えられる。