社会システム研究所
企業の株主総会が、6月の下旬の特定日に集中することは周知の事実である。経営者がこの集中日を選択する原因として以下の二つの仮説があげられる。第一に、株主からのモニタリングを回避するため、経営者は自らの立場を有利にするような行動(エントレンチメント行動)を選択するというものである。第2に債権者などの他のステークホルダーを重視したことで、株主を軽視することになったというものである。本稿では、これらの仮説を下に、企業の資本構成とエントレンチメントに関する指標を用いて、株主総会集中日を選択した企業と非集中日を選択した企業との比較を行った。検証の結果、非集中日を選択した企業は集中日を選択した企業と比較して、平均的に外国人持株比率などの機関投資家による持株比率が高く、企業価値や株価も高いことが分かった。一方で集中日を選択した企業は有利子負債の規模が大きいことから、比較的、債権者との関係性が強いと推察される。またエントレンチメントの指標は、統計的に弱い結果であるが、非集中日を選択した企業が高いことが分かった。このことは債権者のモニタリングが、株主のモニタリングよりもエントレンチメントを抑制する効果があるか、もしくは、株主によるモニタリングがエントレンチメントについて有効に機能してないと推察される。
つまり、「経営者が株主総会の非集中日を選択することで、株主による経営者へのモニタリングが有効となる」ということが、必ずしも言えないことを示唆する結果となった。