理事(前専務取締役)
APEC Study Centres(ASC)の年次カンファレンスが4月18日~20日にかけてメルボルンで開催された。カンファレンスの全体のテーマは、“Driving Growth – APEC’s Destiny” で、このテーマの中に、”Aging population in APEC – impacts on Pensions”というセッションがあり、筆者は「日本の人口高齢化と社会保障制度改革への影響」についてプレゼンテーションを行った。
APECの中のアジア諸国は、出生率の低下によって急速なスピードで高齢化が始まろうとしている。高齢者比率(65歳以上の人口が全人口に占める比率)は、今後10年間で労働者人口比率を上回るという予測もあり、その結果、高齢者向けの社会保障と医療保険に対する政府財政支出が増え、GDPに占める比率が増加し、財政を圧迫する可能性がある。
韓国では、日本以上に出生率が低く、人口減少が懸念されている。そのため、国民年金制度が維持できるか疑問視されており、事前積立方式への一部移行が行われているが、十分ではない。そこで、積立政策の改善方法や会計基準の変更が議論課題になっている。
日本では、既に高齢化が進み、高齢者比率は20%を超えている。このため、社会保障制度の改革が行われ、保険料の固定化とマクロ経済指標に基づく自動調整を導入した。また、巨額の公的年金積立金の市場運用を行っており、市場環境に左右されながらも、累積黒字を確保し、効果を上げている。企業年金制度では、確定拠出年金制度の導入によって、企業の選択肢が増加している。
一方、人口高齢化に対する政策との相互作用を検討する必要があるが、多くの政策の影響は良くわかっていない。そこで、高齢化と他の人口構造の変化に対する政策協議をAPECで議論し、決定されるべきであるという提案などが行われた。