今月号では、内部資金と研究開発投資(R&D)との関係について、設備投資との比較から詳細に論じる。R&D投資は長期的な企業の競争力に必要不可欠なものであるが、その特性上、外部の投資家とは非対称情報が大きい。2001年から2006年度までのパネルデータを用いた分析の結果、研究開発投資は企業の内部資金の制約を受けている可能性が示唆された。また、金融費用や財務レバレッジなど長期的なキャッシュフローの見通しに影響を及ぼす変数では、設備投資よりもR&Dについて明確な傾向が捉えられた。更に、投資機会の水準を考慮した分析では、特に成長企業において、R&Dが内部資金により制約を受ける可能性が示唆された。本稿の分析結果は、特に成長企業においてはR&Dが過少とならないように一定の現金を有することを肯定するものである。