理事(前専務取締役)
UNEPFI(2007)は、ESGファクターが投資パフォーマンスに影響を及ぼしているとする調査報告書を作成した。国連などが策定したPRI(責任投資原則)では、ESGファクターを投資プロセスに盛り込んでいるが、このことが受託者責任に反しないとする理論的な根拠としてこの報告書が位置づけられている。
本稿では、UNEPFIの調査報告書で引用されている主要論文等について、分析方法などを調査した。これらの論文においてESGファクターの投資パフォーマンスへの影響は、幾つかの異なる視点から、またある一部分について分析が行われている。そこで、ESGファクターの投資パフォーマンスに及ぼす全体の影響フローを検討するとともに、個々の因果関係に関する関係仮説を整理した。ESGファクターは、CSP(コーポレート・ソーシャル・パフォーマンス)としてCSR評価会社のスコア等によって評価され、企業財務データや株式リターン等のCFP(コーポレート・フィナンシャル・パフォーマンス)にどのように反映されるかが研究されている。
本稿で取り上げた論文をみる限りESGファクターが投資パフォーマンスに影響を及ぼすという認識は正しいであろう。しかし、その論証がより頑健性を持つためには、①CSR評価会社の出すスコア、レーティングの合理性と普遍性、②運用機関の運用プロセスへのESGスコア、レーティングの組み込み実態、③ESGファクターとCFP(財務データ)の関係分析が必要であろう。