手元に1990年1月17日のメモが残っている。これは、日興フィナンシャル・インテリジェンスの前身である日興リサーチセンターで、投資工学研究のサイエンスアドバイザーをお願いしていたW. F. シャープ博士との打ち合わせ内容を記したメモである。そのメモの中に、今後の行うべき研究開発のテーマとして、「負債」が挙げられている。
1990年当時はわが国においては、日興バーラ株式モデルなどによりポートフォリオのリスク分析モデルが定着し、アセット・アロケーション・モデルの開発によって年金資産の効率的な運用に向けたコンサルティングが始まろうとしていた。わが国の年金資産運用は、まだ運用規制下(5:3:3規制)にあり、1997年に受託者責任ガイドラインが制定されて、運用規制が撤廃されるまではアセット・アロケーションが自由に行えなかった。