本稿では、2009年8月末までに販売されたSRIファンドと非SRIファンドに関するパフォーマンス分析を行った。国内株投信でのSRIファンドと非SRIファンドについては、直近1年で月次ベースの非SRIファンドのパフォーマンスが統計的有意に高い結果となったが、3年間のサンプル、5年間のサンプルでは、統計的有意な差が確認されなかった。どのサンプル期間からも、運用戦略上(トラッキングエラー)の差異によって、パフォーマンスに影響を与えていない。さらに、これまでの視点にはない「社会規範性」に着目し、「社会規範的」銘柄群と「非社会規範的」銘柄群(タバコ、ギャンブル、アルコール)にはパフォーマンスの差異が見られることを利用して、SRIファンドと非SRIファンドのアルファの源泉について検証した。これらの結果より、非SRIファンドは、短期・中期的には、非社会規範的な銘柄群からアルファを獲得することで、非SRIファンドの収益に貢献しているが、長期的にはその効果に有意な差がないことが確認された。