コア預金モデルの活用の現状と今後の方向性~リスク・経営管理への有効活用に向けて~

サマリー

金融機関におけるコア預金の内部モデル導入が最近進んでいるようである。しかし、その導入目的は多くの場合、規制上の名目的な金利リスクの低減、つまり「アウトライヤー比率」の引き下げにとどまっているように見受けられ、リスク・経営管理の高度化が進んだとは言い難い。本来、コア預金のモデル化は、資産と負債の統合的なリスク管理とそれによる収益の追及という、ALMの観点から捉えるべきものであるが、このような意味でコア預金モデルを有効活用できている金融機関はごく限られているのではないか。
このようにコア預金モデルの有効活用が進んでいない背景としては、「預金者行動をその要因別に分析して説明できるモデル」がマーケット・スタンダードとして未だ存在していないという事情がある。既存のコア預金モデルは、預金残高と金利のみをデータとして用い「預金残高の推移を直接モデル化」するものであるため、預金の流入・流出の様々な要因が正確に把握できず、リスク・経営管理目的には必ずしも十分ではない。また、預金者の属性・セグメント(個人なら年齢・性別・地域・年収・給与/年金振込口座の別、法人なら業種やメインバンクの別など)に分類された詳細な預金データの整備も必ずしも進んでいない。
今後、コア預金モデルの有効活用が進む契機としては、主に以下の三つが考えられる。一つ目は、コア預金のより正確なリスクの把握・管理を目的とするモデルの精緻化である。二つ目は、モデルの経営管理への活用であり、例えば預金者に対して提示する金利の運営方針のセグメント別の検証などによるより積極的な「コア預金運営」への活用である。三つ目は、バーゼルⅢにおいて導入が検討されている流動性規制である。この流動性規制で導入される指標は、預金者との入出金パイプの有無(例えば、給与/年金振込口座の別)等を考慮して算出されるものであるため、コア預金モデルとの整合性が問題となる。このため、預金者属性など「預金者行動をその要因別に分析して説明できるモデル」の開発やセグメント別の詳細な預金データの整備が、今後急がれよう。

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