企業におけるESGの課題(1)-「顧客」と「従業員」に関連する問題の把握-

サマリー

昨今、国際的な潮流として、国連環境計画などの国連機関やグローバルレポーティングイニシアティブ、会計士や証券アナリストの団体などが、企業のステークホルダーに対するESG(環境、社会、ガバナンス)の取組みに関する情報(ESG情報)をさらに開示することを企業に要求している。企業のESG側面の情報は既にCSR報告書などで開示されているものの、それらはESG情報を活用したいとする投資家のニーズを満たしていないことが指摘されている。その理由の1つとして、ESG情報を開示する企業と、その情報を利用する投資家との間で、マテリアリティ(情報の重要性)に関する認識のミスマッチが起きていることが挙げられる。
このようなミスマッチ解消に少しでも貢献するため、本稿はESG情報を利用する側の視点を明らかにすることを目的としている。具体的には、国際行動規範やESG情報を専門に評価する評価機関(ESG評価機関)の評価項目、サステナビリティ・レポートの開示要請項目を参考に、企業と各ステークホルダーとの関係において取り上げられている項目を分類・整理した結果について報告する。
第1回目の今回は、「顧客」と「従業員」という、二つのステークホルダーに関連付けられる問題について取り上げる。
「顧客」については、製品・サービスの購入前後において、顧客の権利に配慮したESGの取組みが開示されているかどうかが重要である。製品・サービスの購入時には「製品・サービスの品質」を確保し、製品・サービスの購入前・購入後には「顧客対応」をいかに行うかが重要となる。さらに、より長期の時間軸からは、「新たな機会」をどう創造していくかも重要な取組みとなる。ESG評価機関の評価項目やサステナビリティ・レポートの開示要請項目としても、こうした項目が取り上げられている。
「従業員」については、人種、民族、性別といった属性に関連した平等・公平の問題と、従業員の評価やインセンティブなど従業員のモチベーションの問題に大別される。ESG評価機関の評価項目やサステナビリティ・レポートの開示要請項目として、「人権」に関する取組みの状況や「労働条件」の情報、「機会均等」(公平な評価・インセンティブなど)に関する取組みの状況が挙げられている。

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