風評被害のメカニズムに関する一考察~福島第一原発事故後の消費行動に関するアンケートから~

サマリー

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は、甚大な被害をもたらした。加えて、福島第一原発事故に伴う生鮮食品に対する風評被害は大きな問題となった。関谷(2011)は、風評被害が生じる要因の一つに、消費者は科学的根拠のない主観的安心感に基づいて行動することを挙げている。主観的安心感に基づく行動とは、ある商品がその時点では科学的に安全とされているにもかかわらず、消費者がその商品の安全性について確信が持てないため、自らの判断で購入を控えることを指す。このような主観的安心感を引き起こす要因について、関谷(2011)は、マスメディアの影響が極めて大きいことを指摘している。すなわち、消費者が目にする情報が、主観的安心感に基づく行動の誘因となった可能性がある。本稿では、風評被害のメカニズムを考察するため、原発事故後の被災近隣地域産の生鮮食品に対する消費行動に関するアンケートデータを用いて、消費者の利用した情報源の違いとその種類がその消費行動に与える影響について分析した。
分析の結果、消費者が利用する情報源がテレビや新聞であった場合、消費者の被災近隣地域産生鮮食品に対する買い控えを抑制していたことが明らかとなった。また、消費者が利用した情報源の種類が多いほど、被災近隣地域産の生鮮食品を買い控える傾向があることが明らかとなった。原発事故直後、テレビや新聞によるニュースだけでなく、その他の多くの情報源を利用した消費者ほど、情報の取捨選択が難しくなり、自身にとって都合のよい情報のみを利用した結果、主観的安心感に基づき、被災近隣地域産の生鮮食品を買い控える行動としてあらわれたと推察される。

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